イギリスで出産するにあたり懸念はただ一つ、2人目にして完全無痛分娩が出来ないことである。
エコーが出産まで2回きりだったり、受付の度に星座早見表みたいな円形のボール紙を回して予定日を確認されたり、妊娠以来まだ医者に会っていない(結局産んだ後まで会うことはなかった)など、健康かつ問題なしであるが故最低限の医療サービスでここまで来た。
イギリスの国営医療サービス(以下NHS)は無料なこともあり、もし問題があればチームが組まれてケアが行われる等手厚いのだが、私の様に大したことないと誠に簡素極まりない。1人目を東京の完全無痛分娩可能な病院にて100万円以上かけて産んだ、4年前とはとにかく何かと違いすぎる状況。医療専門用語も分からないものがありそうなので事前に仕入れておきたいところ。
ミッドワイフ(助産師さん)に腹周りを紙のメジャー(!!)で計られながら、母親学級を申し込みたいと伝えた。
「早すぎるわね、34週以降に受けられるからまた電話して」
間際過ぎないか?笑 とりあえず35週で参加することに。
NHS運営の病院はpostcode lotteryと言われるほど、場所によりかなり当たり外れがあると聞く。隣町にある最寄りの総合病院Kingston Hospitalは息子のママ友達も多数そこで出産しており、聞いた感じ評判はいいのだがあくまでNHSとして、であるから油断は出来ない。Kingstonのミッドワイフによる母親学級はchildren centreで行われた。
10人の母達、カップルで来ている人々が半数、うち未婚カップルが2組。経産婦は私含め2人。
「では自己紹介、週数、心配なことや気になることを時計周りでお願いします。夫婦で来ている人は夫が週数を発表するようにね!」
私は質問したいことがありすぎだった。病院からもらうマタニティノートのバースプラン欄が割とフリースタイル過ぎだったことで謎が増えた。
例えば出産時のポジションの希望
・スタンディング
・座る
・四つん這い
・スクワット
・横向きに寝そべる
・背中に枕をセットしベッドにて
…ベッドの上以外アクロバティック過ぎて想像出来ないがとりあえず選択肢は多岐に渡るようだ。
胎盤の出し方
・腿に注射を打ち排出を促進する
・自力で出す
等何かとプリミティブな選択肢があって怖い!
そしてミッドワイフの説明によると、陣痛後笑気ガスや鎮痛剤、テンスマシーン等を順番に使いながら痛みを逃し、麻酔は最後の最後の選択肢かつ医者がその時手が空いていたら使用可とのこと。自然分娩したママ友もいっぱいいて、よく言われる「海外では無痛が主流」の海外に少なくともイギリスは入っていない模様だ。ひえーー
そしてそんな説明もそこそこに、最も時間が割かれたのは痛みの自力での逃し方であった。深呼吸、慌てずに、アロマオイルを必ず持参して、マインドフルネスをマスターしろと。例として、パラシュート降下に失敗し木の上に不時着した男が、マインドフルネスを会得していたが為に骨折の痛みを感じなかった話をされた。マインドフルネス、アプリとかいっぱいあるから皆DLしといてねーとのこと。マジ?あと1ヶ月しかないんですけど…
そしてイギリスでは会陰切開基本しない。ここも最大の懸念点の1つ。曰く昔はしていたが、自然裂傷の方が治りが早いことが分かり今はしていないとの説明。日本と真逆なんですけど…こんな原始的な2択が何でこんなに違うんだろうか。ナーサリーのママ友に、Kingstonで出産した彼女の友人が裂傷がひどく半年後手術をした話を聞いたので余計に恐ろしい。
質問コーナーで挙手し質問。
「会陰切開したいんですけどバースプランに入れられますか?」
その瞬間、参加者全員が「この人は正気か!?」という顔で私を見ていた笑。回答はやりたいなら医者間に合えば出来るけど治りが早いから自然裂傷がオススメとの説明。やはりか…
他にはラテン系のカップルが、自分達の国では頭の形への影響が甚大な為吸引分娩は禁止になった、絶対したくないから吸引が必要と判断されたら帝王切開に切り替えたいとか無理なお願いしてて案の定無理と言われるなど。
帰りがけ、とかくマイナス思考、陣痛未経験、絶対に麻酔希望とミッドワイフに訴えてみた。何かと言ったもの勝ちなこの国では何事も言わないと始まらない。
「使いたかったら出来るよう努力するが、より重症で優先度の高い人のところに医者は行くので保証は出来ない。2人目だし笑気ガスと鎮痛剤でいけるんじゃない?」
そんな……
しかし果たしてその通りの出産となったのであった。未開封のアロマオイルは3本、家の中のどこかに転がっている。
出産後のザUKクオリティな朝食